2020年に創業50年を迎える老舗の本屋さん、正和堂書店。Instagramでおすすめの本を毎日レコメンドしている人気の正和堂書店さんが、ママと子どもたちにぴったりな本を紹介してくれる連載「ママとこどもの本屋さん」がスタートします。
ママにはちょっとした時間を利用して読めるお役立ち本2冊を、子どもたちには楽しみながら親子のやりとりが増える絵本2冊をお届け。
第1回目のテーマは、食欲の秋にぴったりな「食べものに関する本」です。思わずお腹が空いてしまうかもしれない(?)4冊の本に出合えますよ。
「お手軽」「ラクチン」が合言葉。ママにも嬉しいスープたち
『帰り遅いけどこんなスープなら作れそう』/有賀薫 著/文響社/1188円(1100円+税)
「夜遅くまで頑張っているあなたに、おつかれさま」と言ってくれるスープ本は、ママにとっても強い味方になります。本を開けば、見開きに3ステップのレシピがひとつ。そのシンプルさが、「あ、私でも作れそう!」と背中を押してくれます。
少しの材料で、手順もちょっとだけ。買い物に行けなかった日も、子どもたちの猛烈な腹ペココールの日も、ササッとできそうです。
レシピが簡単な分、パスタを足したらどうなる!? うどんもいいかも!みたいに、アレンジの余裕も生まれますし、「包丁を使わないレシピ」もあるので、子どもと一緒にチャレンジするのにもオススメです。
レシピは「10分でできる時短スープ」や「世界のスープ」など、曜日ごとにテーマでまとめられていて、しっかり食べるスープからサラっと体に優しいスープまで、種類がとっても豊富。
お味噌汁にアボカド? きゅうりとヨーグルトのスープ? という予想外の材料の組み合わせに、味を想像するのが楽しくなってきます。章の間には、出汁やブイヨンの取り方、まぜご飯のレシピなんていう気の利いたコラムもあって何だか得した気分にもなります。
1~2人分から作れるレシピは、ママや子ども用のご飯にちょうどいい量かもしれません。マンネリ気味なお昼ごはんや、めんどうな自分ひとりのご飯メニューにも、風穴をあけてくれそうな1冊でした。
ママのための、お助け栄養学。成長期の食事にこの一冊
『成功する子は食べ物が9割』/細川モモ・宇野薫 監修/主婦の友社/1404円(1300円+税)
子どもの健やかな成長は、ママの大きな願い。いくつになっても子どもの成長と毎日の食事に、ママはきっと頭を悩ませますよね。「食育」なんて言葉も聞くけれど、何をどうしたらいいんだろう? そんな悩みに、この本は救いの手を差し伸べてくれます。
「冷蔵庫の中身がカラダの中身」「20年後に後悔しても取り戻せない」という、厳しい言葉とはうらはらに、栄養学に関するコラムはイラストや図で優しく解説されています。3~14歳の成長期に必要な栄養学の知識がビジュアル化されているので、ザッと目を通すだけでも内容が入ってきます。
もちろん、コラムには目から鱗(うろこ)の知識が盛りだくさん。「成長期の子どもは大人の1.5倍の『たんぱく質』が必要!」「疲れやすい・集中力がないのは鉄分不足」など、じっくり読んで学べます。
また、必要な栄養素は「脳神経は6歳まで!」「骨は思春期まで!」と、子どもの身体の発達に合わせて紹介されていて、対策レシピや、ストック食材でいつもの一品に栄養素をONする小技があり、本の知識をすぐに活用できるところもありがたいです。
他にも、「見える化」された年齢別・男女別の1日の目安量とメニューや、お悩みQ&Aなど、成長期の食事を考えるには充実のラインナップ。子どもと一緒にしっかり食べて、頑張るママも元気をチャージしましょう!
とっても身近で、意外に知らないパンのこと。パンからふくらむ子どもの世界
『パンのずかん』/大森裕子 作/井上好文 監修/白泉社/950円(880円+税)
まるいパン、ぺたんこパンに、おかしなパン。温かいタッチで描かれたイラストは本物そっくり! パンのぬくもりまで伝わってきそうです。
少し小さめの可愛い本に、ギュッと詰められたパンは、全部で104種類。パンには、ひとつひとつ紹介文があります。そこには、発祥地の国旗と一緒に、ジャムパンの中はもともとあんずジャムだった、クイニーアマンはパン屋さんの失敗から偶然生まれた、なんていう豆知識がいっぱいで、大人も驚く発見があります。
たくさんのパンが紹介された後には、可愛いくまのキャラクターたちが、麦の収穫からパンがお店に並ぶまでの工程を、楽しく見せてくれます。
子どもたちは、ページを行ったり来たりしながら、「これはなぁに?」「これ食べたい!」とおしゃべりを始めることでしょう。パンのいいにおいがしそうなページに、子どもたちは思わず鼻を近づけてクンクン、つまんでパクっと食べるマネをしてみたり。この本をメニューに見立てて、楽しいごっこ遊びが始まるかもしれませんね。
読む・見るだけにとどまらない、楽しい親子のやり取りを生み出してくれるのが、この本の素敵なところです。それは絵本を閉じても変わりません。とっても魅力的な「パンのずかん」、読んでいるとおなかが空くのが玉にキズ?今日のおでかけ先が、パン屋さんになってしまうかもしれませんよ!
おすしを食べたいノラネコぐんだん! ユーモアいっぱいの悪だくみ
『ノラネコぐんだん おすしやさん』/工藤ノリコ 著/白泉社/1296円(1200円+税)
「おすし たべたいね ニャー」。ワンワンちゃんのおすしやさんを覗いて(のぞいて)、なにやら企んでいるノラネコぐんだん。どうやってお寿司を食べるのかと思っていたら……これまた、ずいぶんと大掛かり!そして今度こそうまくいくかと思ったら、「ドッカーーーーン!!」と大惨事。お決まりの場面に、きっと子どもたちは大爆笑です。
文章も短く、物語の展開に合わせてテンポよく読み聞かせることができます。ノラネコぐんだんの叱られている殊勝(しゅしょう)な姿や、そそくさと帰ろうとする姿には、クスッと笑ってしまいます。しかし、悪気はなくても「わるいこと」をしたら、しっかり「しごと」で返すのがノラネコぐんだんのいいところですね。
さて、ストーリーもさることながら、すみずみまで丁寧に描かれた世界は魅力たっぷり。愛嬌いっぱいのサブキャラクターたちにも注目です。どこを開いても、何度見ても新しい発見があって繰り返し読みたくなります。
ヒラメやウニの絵を見て、どのお寿司になるのか当てっこしたり、「この人、何て言ってるかな?」なんて考えたりするのも面白いです。
ユーモアいっぱいのノラネコぐんだんシリーズ。ちょっぴりふてぶてしくて、でも憎めないノラネコぐんだん。次は何をやらかすのか、ノラネコぐんだんの「わるいこと」と「しごと」っぷりをまだまだ見たくなりますね。
2020年に創業50年を迎える、大阪市鶴見区にある昔ながらの本屋さん。
活字離れと言われるなか、さまざまなジャンルの本を知ってもらいたいという思いから、2017年3月より毎日インスタグラムにて本を紹介しています。
新しい試みとして発表したアイスキャンディー型のブックカバーも話題となりました。
3世代に愛される町の本屋さんを目指し、色々な事にチャレンジしながら頑張っています!