2020年に創業50年を迎える老舗の本屋さん、正和堂書店。
Instagramでおすすめの本を毎日レコメンドして、2万8000人以上のフォロワーがいる正和堂書店さんが、ママと子どもたちにぴったりな本を紹介してくれる連載「ママとこどもの本屋さん」。
ママにはちょっとした時間を利用して、ほっとひと息できる本2冊を、子どもたちには楽しみながら親子のやりとりが増える絵本2冊をお届けします。
第2回目のテーマは、「旅に関する本」です。旅や冒険に出かけたくなるようなウキウキ感を味わえる4冊の本に出合えますよ。
家族旅行の成功を後押し! 家族みんなで沖縄を楽しむヒケツ!
『子連れで沖縄 旅のアドレス&テクニック117』/島村麻美 著/ダイヤモンド社 ダイヤモンド・ビッグ社/1,080円(1,000円+税)
小さな子どもがいると近場のお出かけもままならないのに、家族旅行なんて……。そんなママたちの不安を解消し、背中を押してくれるのがこの本です。
著者は5歳と1歳の兄弟を持つ、沖縄が大好きなママ。何度も沖縄を訪れているからこそわかる、子連れ沖縄旅のノウハウが、観光・食事・買い物・宿泊・テクニックに分けてまとめられています。
子どもと一緒に沖縄を楽しむ方法がたくさん紹介されていて、ビーチやマリンレジャーはもちろん「世界にひとつだけ!ブルーシールのアイスデコ体験」など、子どもたちのウキウキはしゃぐ姿が目に浮かぶような楽しみ方がいっぱい。
魅力的な沖縄の写真も多く、子どもたちの弾むような笑顔がとても印象的です。所々に添えられた息子さん達の言葉からも、伸び伸びと沖縄を満喫する様子が伝わります。
掲載されているレストランには、禁煙・子供用椅子や食器の有無・離乳食の持ち込み等だけでなく、乳・卵のアレルギー対応表も付いています。また、ホテル託児所や代行サービスなど、子どもの負担にならない大人のリフレッシュアイディアがあるのも嬉しいですね。
そして、乳幼児連れの旅行には付き物と言えるアクシデント。
本の後半では、出発するまでの準備から、帰るまでを徹底フォロー。飛行機やレンタカーなど移動のコツから注意点まで、沖縄以外にも役立つ「旅のコツ」が盛りだくさんです。読み終わる頃には「行けたらいいな」が、「行こう!」になっているかもしれませんね。
心が窮屈に感じたら、あなたはどこへ行きますか?気軽で身軽な旅のエッセイ
『心がほどける小さな旅』/益田ミリ 著/幻冬舎文庫/497円(460円+税)
「遠くへ行きたい。そう思ったときは心がカチコチに固まっている。」
益田ミリさんのこの言葉に、胸を打たれる人も多いのではないでしょうか。この本はそんな心を柔らかくする、小さな旅のエッセイ集です。
旅した場所は、日本全国津々浦々の14箇所で、季節ごとに紹介されます。
疲れて自然の中に逃げ込みたくなるとき、美しい写真や言葉に触れたとき、ふとしたキッカケから始まる旅は、予定もカバンの荷物も詰め込みません。
どの旅でも「これをするためにここにきた」というシンプルで明確な目的がひとつ。その潔さが、がんじがらめの心をほどくのかもしれません。
「桜花賞」の阪神競馬場では、久しぶりに何かを全力で応援する気持ち良さを感じられたり、素敵な朝食を食べに訪れたホテルでは、「料理というより、『贅沢な時間』を買ったんだなぁ」「幸せは、たまには、わざわざかみしめたほうがいいのだ」、と思ってみたり。
心が動いていく様子がサラリと書かれ、旅先だからこそ出てくるひとことに、思いがけず心をつかまれます。
テンポの良い文体でスルスルと読め、力が抜けているのに感慨深い言葉たち。添えられたゆるいイラストや、ご当地のおすすめ情報も楽しめます。
どこから読み始めても、スキマ時間で読み切れる文章量が嬉しいエッセイ。時間に追われる毎日の中、ぶらりと一人旅に出てみたい。そんなママのひそやかな願望を、わずかな読書の時間が、きっと受け止めてくれますよ。
「おやすみなさい」の、その前に、心おどるお月さまの輝きを
『おつきさまのおさんぽ』/カワチ・レン 作・絵/Gakken/1,404円(1,300円+税)
シンプルな線で描かれた静かな夜の街。白とグレーの景色の中を、黄色に光り輝くお月様がお散歩していきます。お月様が通りかかるたび、いろいろなものがピカピカと輝きだし、いつのまにか大行進が始まります。
そこには「がっちゃん がっちゃん ぎいぎい ちゃっぽん」と、愉快な音がたくさん! ついつい節(ふし)をつけて、からだを動かしながら読みたくなってしまいます。
みんなが辿り着いた「うみのそこ」は、本当に素敵なページです。開いた瞬間に現れる、鮮やかな色彩にはハッと目を奪われて、思わず「わぁ!」と声をあげるかも。
また、お月様のお部屋に集まった天体の名前が、後ろ見返しで紹介されているのも嬉しいですね。これをきっかけに天体に興味を持つ子もいるかもしれません。
他にも、細かく書き込まれた絵には、心づくしがたくさん。ページをよーく見てみると、あちらこちらで小さな出来事が起こっています。
本の最後にはヒントがあって、お散歩中に起きた出来事を探して遊べます。答え合わせはwebでできるというのも、イマドキですよね。
夜、本を読み終わって、眠る前のひととき。少しカーテンを開けて、子どもと一緒にお月様のお散歩を眺めるのもいいですね。夜の静かなおしゃべりで、遥かかなたの宇宙までお散歩気分を味わうのはいかがですか?
不思議がいっぱい!めぐりめぐる水のゆくえ
『しずくのぼうけん』/マリア・テルリコフスカ 作/ボフダン・ブテンコ 絵/内田莉莎子 訳/福音館書店/972円(900円+税)
コップに注がれた一杯のお水。ここに来るまでに、たくさんの大冒険があったとしたら……少しワクワクしませんか?
この絵本にはそんな「しずく」の冒険が、のびのびとした線と色使いで描かれています。
ある日バケツを飛び出した「しずく」は、次々と形を変えながら、空と地面をめぐる旅をします。その姿は表情豊かで、とってもチャーミング。くるくると変わる「しずく」の状況には、思わずハラハラドキドキしてしまいます。
50年ほど前にポーランドで出版されて以来、世界中の子どもたちに水の不思議を伝えてくれているこの絵本。もしかすると、小さいころに読んだママやパパもいるかもしれませんね。
読み聞かせるなら4歳くらいからがオススメです。とてもリズミカルな文体で、文の長さはさほど気になりません。もし子どもには長めと感じたら、場面に合わせて端折り(はしょり)ながら読んだり、親子でやり取りしたりして読むのもいいですね。字が読めるようになったら、一緒に声に出して読むのも楽しいです。
少し難しい言葉も出てきますが、それを知ったり、考えたりするのも楽しみのひとつ。きっと、就学前の知的好奇心を育てるのにも、ひと役買ってくれます。教科書で習う内容も、絵本で触れているとぐっと身近に感じるはずです。
秋も深まり、もうすぐ息が白くなる季節がやってきます。霜や雪など、あちこちに冒険中の「しずく」たちを発見できると思うと、寒い冬の到来も少しだけ楽しみになります。
2020年に創業50年を迎える、大阪市鶴見区にある昔ながらの本屋さん。
活字離れと言われるなか、さまざまなジャンルの本を知ってもらいたいという思いから、2017年3月より毎日インスタグラムにて本を紹介しています。
新しい試みとして発表したアイスキャンディー型のブックカバーも話題となりました。
3世代に愛される町の本屋さんを目指し、色々な事にチャレンジしながら頑張っています!