2020年に創業50年を迎える老舗の本屋さん、正和堂書店。
Instagramでおすすめの本を毎日レコメンドして、3万7000人以上のフォロワーがいる正和堂書店さんが、ママと子どもたちにぴったりな本を紹介してくれる連載「ママとこどもの本屋さん」。
ママには忙しい毎日にちょっとした笑いと癒しを与えてくれる本2冊、子どもたちには親子のやりとりが増えるユニークな絵本2冊をお届けします。
家族にはいろいろあるけれど、“たのしいことを拾って生きれば”大丈夫なんだ!
『たのしいことを拾って生きる。〜まいにちいろいろ、家族ドロップス〜』/まりげ 著/大和書房/1,404円(1,300円+税)
妊娠・出産、夫が脱サラして漁師に転職、田舎への移住と慣れない生活、さらには古民家のセルフリノベーションまで!家族に次々と訪れる転機、ちょっと想像するだけでも大変そうな毎日にも関わらず、まりげさんの描くマンガには、温かい笑いがあふれています。
温かいタッチで綴られるのは、天真爛漫な2歳と4歳の兄弟と、まじめな夫との日々。まりげさんは、何が起きても否定せずに、相手を受け入れていく柔軟な姿勢があります。
たとえば、まりげさんが長男に「初めてのお年玉で自分の好きなものを買っていいよと」教えたときのこと。「やきとり」と答える長男に、まりげさんは「明日は大好物のつくね、20本買いに行こうか」と返します。
子どもたちが、「(まりげさんの)抜けた差し歯じゃないか」と言って、発泡スチロールや消しゴムのかけらを持って来たときも、まりげさんは「歯のスペアが増えた」と受け取っておきます。
どの話も、家族に対する優しいまなざしが伝わってきて、心がほっこり癒されます。
ププッと笑えて、時々シュール、まりげさんのマンガはインスタグラムでも大人気です。書籍化にあたって、築100年の古民家をセルフリノベーションする様子が、写真や間取り付きで紹介されているのも興味深いですが、印象的なのは、描き下ろし漫画です。
そこには、移住までの経緯やご両親の離婚など、どんな問題に直面しても、自分の葛藤や周囲の人としっかり向き合いながら、前に進んでいく姿が描かれています。胸にジーンとくるエピソードも多く、読み終わったあとは心が励まされて、前向きな気持ちになります。
たとえうつむくことがあったって、「たのしいことを拾って生きる」のが、幸せのヒントなのかもしれませんね。
子どもの無限パワーが毎日の生活を笑いに変える!
『家族ほど笑えるものはない』/カフカヤマモト 著/KADOKAWA/1,188円(1,100円+税)
インスタグラムでも多くの共感と支持を得ているカフカさん。帯に書かれた「育児疲れは子どもが癒す!」の文字、思わず「あるある!」という、ママたちの声が聞こえてきそうです。
この本に登場するのは、お風呂上りに「透明のやつを着てるんや」と裸のままでいるハイテンションで心優しいお兄ちゃんと、父と母の膝4つを使ってお昼寝する、大物感漂う妹。
そして、冷静沈着に妻と子どもたちを見守る夫と、ユルくも鋭い突っ込みを入れる妻の4人家族。兄妹2人の成長日記もさることながら、カフカさん夫婦のやり取りも味があります。
何気ない一日から切り取られた1コマには、「育児あるある」や家族への愛情がいっぱいで、時にホロリとさせられます。「子どもの寝顔を見ているだけで終了」してしまう貴重な自由時間、お茶は飲まないのにお風呂のお湯はやたら飲んだりする子どもたち。
どのページを開いても、自分の子育てと重なる部分に共感したり、安心したりするようなエピソードが満載です。おもしろおかしく読んでいるうちに、もしかすると、どの家庭でも「家族ほど笑えるものはない」のかもしれない!と、イライラ&ションボリする日でも、アハハ!と笑い飛ばす元気をくれます。
1日1コマの形式も、気軽にパラパラ読めるので、子育ての息抜きにぴったりです。また、4本の描き下ろし漫画も、心の動きが丁寧に描かれていて、インスタグラムとは違った雰囲気が味わえますよ。長男の赤ちゃん返りを描いた漫画では、淋しさを克服していく長男とそれに寄りそうカフカさんの姿に胸を打たれます。
新しい年が始まりました。笑う門には福きたる。子どもの無邪気さにつられて、大人も笑顔の多い日々を送りたいですね。
子どものあたまはワンダーランド!!大人は、どのくらい見守れるかしら?
『もう ぬげない』/ヨシタケシンスケ 作/ブロンズ新社/1,058円(980円+税)
本を開けば、もう、おかしい!! 子どもたちは爆笑必至、大人だって吹き出してしまいます!
主人公は、ひとりで服を脱ぐから大丈夫!と言ったものの、脱げなくなってしまった男の子です。
「ぼくのふくが ひっかかって ぬげなくなって、 もう どのくらい たったのかしら」。
このまま服がひっかかって脱げなかったら……と不安になるものの、「なんとか なりそうな きもするね」と、とっても前向きです。
そこからはページをめくるたびに、突拍子もない妄想が広がっていきます。困ったことになったら「どうしよう」と思いながらも、「でもだいじょうぶ」と、自分で解決方法をあみだしていきます。
その様子に、子どもたちも声をあげて喜ぶのではないでしょうか。そして、どこまでも自己肯定していく姿には、大人も思わず、アッパレ!と言いたくなってしまいます。
しかし、無事?に服も脱げて、お風呂に入れたぼくを、新たな問題が襲います。コミカルに哲学的な問いを描くことで定評のあるヨシタケシンスケさんの絵本、一筋縄ではいきません。子どもは失敗を繰り返しながら、成長していくのですものね。
何でも自分でやりたい子どもに手を焼く経験は、子育ての中でよくあることですよね。時間が気になって苛立つママの視線をよそに、もしかすると、当の子どもたちは壮大な妄想を繰り広げているのかもしれません。
とんでもない子どもの想像力に触れることも、子育てのおもしろさ。忙しい手を休めて、ちょっぴり耳を傾けてみるのはいかがでしょうか。きっと、イライラも吹き飛ぶ笑いが待っていますよ。
お弁当がもっと楽しくなるエッセンス!しろくまの遊び心を召し上がれ
『おべんとうしろくま』/柴田ケイコ 作・絵/PHP研究所/1404円(1,300+税)
お弁当箱のふたを開けるときの、ワクワクする気持ち。何が入っているのか、楽しみで胸が高まりますよね。もしかすると、その瞬間がお弁当の醍醐味なのかもしれません。そんなお弁当に、もし、しろくまが入っていたら…?
くいしんぼうのしろくまは、お弁当が大好き! 「だいすきな おべんとうのなかに はいってみたら、どんな かんじかな?」と、いろんなお弁当の中に入ってみます。好きなものに囲まれてみたい気持ちはわかるけれど、お弁当の中に入っちゃう発想がおもしろいですよね。
おにぎりに、そぼろ弁当など、ページをめくるたびに登場するお弁当は、どれもとってもおいしそうです。くいしんぼうのしろくまくん、オムライス弁当では「おかあさん、ケチャップは たっぷり かけてね。」と、リクエストも忘れません。そして、ピクニックに持って行ったサンドイッチには、なんと家族みんなで入ってしまいます。
どのお弁当の中でも、全身で食べ物を味わっているみたいな、とっても幸せそうなしろくまの表情がたまりません。つられて、笑顔になってしまいそうです。
この絵本を読んだ後は、お弁当箱を開けるときに、もしかして…?なんて想像をしたり、お弁当を食べながら「くいしんぼうのしろくま」を探したり、子どもたちとやり取りするのもたのしいですね。
本を閉じれば、裏表紙にはカラッポのお弁当箱の中に、おなかいっぱいのしろくまが、笑顔でゴロリと寝転んでいます。子どもから返ってきた空っぽの弁当箱のむこうにも、きっとこんな幸せな笑顔があったはず。そう思うと、ママも嬉しい笑顔になりますね。
2020年に創業50年を迎える、大阪市鶴見区にある昔ながらの本屋さん。
活字離れと言われるなか、さまざまなジャンルの本を知ってもらいたいという思いから、2017年3月より毎日インスタグラムにて本を紹介しています。
新しい試みとして発表したアイスキャンディー型のブックカバーも話題となりました。
3世代に愛される町の本屋さんを目指し、色々な事にチャレンジしながら頑張っています!