2020年に創業50年を迎える老舗の本屋さん、正和堂書店。
Instagramでおすすめの本を毎日レコメンドして、5万人以上のフォロワーがいる正和堂書店さんが、ママと子どもたちにぴったりな本を紹介してくれる連載「ママとこどもの本屋さん」。
第8回目となる今回は、秋にぴったりな「アート」をテーマにした、ママと子どもたちにオススメの本をお届けします。
あなたはいくつ知っていますか? 世界を彩る色の名前と物語
『色の辞典』/新井美樹 著/雷鳥社/1,500円+税
みなさんは色の名前をいくつくらいご存じですか?人間の目で確認できる色は、だいたい100万色と言われています。見え方は人それぞれですが、その美しい色一つひとつに名前があり、物語を持っていることを教えてくれるのがこの本です。
シンプルでおしゃれな装丁、文庫本をひとまわり大きくしたくらいのコンパクトなサイズ。紹介される367色は、「赤」「黄」「緑」「青」「紫」「茶」「黒・白」の7つに分けられ、色名ごとに、その色を使ったイラストがあるので、微妙な色の違いが視覚的に分かりやすく、大人から子どもまで楽しめます。また、色の名前の由来や成り立ちが紹介されているので、それぞれ読み比べてみるのも面白いですよ。
例えば、「空色」では「晴れ渡った空の色のような明るい青。農耕民族である日本人は天候に敏感なはずだが、空の微妙な変化を示す色はほとんどない。季節や地域や時刻によって色味が移ろうものを細かに定める意味を感じなかったのかもしれない」とあります。
一方、「スカイブルー」では「米国刊行の色彩辞典は夏の晴天の10時~15時、水蒸気や埃の少ない状況における、ニューヨークから50マイル以上の上空を、1インチの穴をあけた厚紙を目から30センチ離して観察した空の色」、と定義されているそうです。確かに、「アザーブルー」「セレスト」「ゼニスブルー」「ホライゾンブルー」「ミッドナイトブルー」など、他国には空色の種類が多くあるのも興味深いですね。
ひとつ知っている色の名前や物語が増えると、今まで意識しなかった色まで見えてくる感覚になりますよね。芸術の秋、ぜひカラフルに広がる世界を感じてみてください。
ぶらりと「会いに行きたい」、小さくて素敵な美術館たち
『美術館へ行こう ときどきおやつ』/伊藤 まさこ 著/新潮社/1,500円+税
いつも忙しいママだって、ふとした時に美術館に行ってみたくなるときってありますよね?この本では、人気スタイリストの伊藤まさこさんが「のんびりできて、気分転換にもなって、よしっ明日からがんばっちゃおうなんて自分を活気づけたりもできる」美術館を紹介しています。
取り上げられている24カ所の美術館は、大きすぎず、街になじんで居心地がよいのが共通点。ひと口に「美術館」といっても、展示内容は絵画や彫刻だけではありません。「中谷宇吉郎 雪の科学館」や学術文化財を展示する「インターメディアテク」など、多岐に渡っていて、その幅の広さに驚かされます。
掲載されている写真も美しく、その美術館の魅力やたたずまいが伝わってくるようです。また、それぞれの美術館をテーマにしたためられたエッセイも、軽快な文体で「美術館」 の魅力を存分に語ってくれています。
六花亭の包装紙を手掛けた坂本直行の「花柄包装紙館」では、包装紙が完成するまでの坂本の試行錯誤に心を打たれ、「時々、無性に訪れたくなる美術館」として紹介した猪熊弦一郎現代美術館では、「美術館は心の病院」という猪熊の言葉をかみしめ、「ちひろ美術館」では、「かわいい」の奥にある、絵本作家いわさきちひろの強さを感じ取る伊藤さん。
作家や美術館に携わる人々の息遣いを感じながら、時に、美術館そのものに寄りそう姿に、温かい人となりを感じることができます。
そして忘れてはならないのが、「ときどきおやつ」として、各美術館の近くにあるカフェや甘味処などが紹介されていることです。美しいものに触れた後は、ゆっくりとのびやかな心で、その余韻を味わうことも必要ですよね。
美術館は「オトナ」の世界!? 子どもと楽しむアートの世界
『うさこちゃん びじゅつかんへいく』/文・絵 ディック・ブルーナ、訳 まつおかきょうこ/福音館書店/700円+税
ある日、おかあさんが考えた「いいこと」。それは美術館に行くことでした。美術館は静かに芸術を鑑賞するところなので、おとうさんは「うさこは ちいさすぎるんじゃないかね」と言います。でも、そんな心配はどこ吹く風、うさこちゃんは「ちいさすぎる? どうして? わたし もう おおきいよ」と返します。
初めての美術館でうさこちゃんは、さまざまな芸術作品に出会います。静物画に抽象画、彫刻にオブジェなどを見たうさこちゃんのコメントは、「このりんごは ほんもの そっくり」や「これなら わたしにだって かける」など、とっても素直でほほえましいものばかり。「この えは とても いい」と思ってみたものの、「でも、どっちから みたら いいのかしら? ほんとうは よく わからない。」と首をかしげる姿も可愛らしいですね。
ページをめくるたび、子どもらしい等身大の感想がいっぱい! 思わず、大人も童心に帰って芸術に触れたくなって、子どもと楽しめる美術館を探したくなるかもしれません。
文字が少ない分、子どもたちがどんな風に感じているのか、インタビューしながら読み進めるのも楽しいですね。きっと、子どもの創造力に驚かされること間違いなしです。
シンプルでとても分かりやすい内容は、美術館がどんなところなのか教えてくれます。子どもたちの美術館デビューの前に読み聞かせるのもオススメです。
感性の扉を開く美術館。先入観のない子どもの目で、素晴らしい芸術の世界に触れるのは、かけがえのない体験ですよね。その感動が、子どもの夢や創造力を育てるのだと気づかせてくれる一冊です。
「キミのひらめきをかざろう!」ワクワクが飛び込んでくる工作本
『NHKノージーのひらめき工房 レッツ!ひらめき工作ブック』/NHK出版 編/NHK出版/1,500円+税
Eテレの人気番組「ノージーのひらめき工房」。放送を楽しみに待っている子どもたちも多いのではないでしょうか。「レッツひらめき!」を合言葉に、作るまでの発想や過程を大切にしている「ノージーのひらめき工房」。この本にも、そのエッセンスがたくさん詰め込まれています。
紹介されている工作は、とてもカラフルで楽しそう! どれもおうちにあるものを使って簡単に作れるので、工作に苦手意識のある子どもでも、きっと「つくってみたい!」ワクワクが生まれますよ。「シナプー」になりきれるおめんや「クラフトおじさん」のパクパク人形など6つの工作付録もついているので、ここから始めるのも手軽でイイですね。
そして、この本では完成図や作り方ではなく、まず最初に、紙を「もんでやわらかくする」や「じゃばらにおりたたむ」などの「スキル」から紹介されているのも大きなポイントです。学んだ「スキル」を使ってどんなものを発想するのか、子どものアイデアやオリジナリティが発揮されそうですね。
「これをつくりたい!」だけでなく、「こんなことしてみたい!」が「こんなのができた!」につながる工作本。本のカバーには、「大人の方は、できあがった作品だけを見て、「なんだこれ?と思わないで。」子どもがどうやって考えて、どんなふうに作っていくのか、そっと見守って下さい。」と、書かれてあります。子どもと一緒に、モノづくりの過程も楽しみたいですね。
また、本には子どもの作品の写真を貼る額縁と一緒に、タイトルや感想を書くスペースもついています。子どもの作品の保存はママを悩ませるタネでもありますが、子どもの発想や工夫を残せるメモリアルブックとして、振り返って楽しむこともできるのでステキですね。
2020年に創業50年を迎える、大阪市鶴見区にある昔ながらの本屋さん。
活字離れと言われるなか、さまざまなジャンルの本を知ってもらいたいという思いから、2017年3月より毎日インスタグラムにて本を紹介しています。
新しい試みとして発表したアイスキャンディー型のブックカバーも話題となりました。
3世代に愛される町の本屋さんを目指し、色々な事にチャレンジしながら頑張っています!